立つ、座る、歩く、横になる。そういった身体の位置を「姿勢」と呼びます。適切な姿勢とは、身体を安定させるために妥当な量の筋肉の緊張を利用して、身体の各部位が本来あるべき姿で並んでいる状態のことをいいます。たとえば、耳が肩の上の位置に適切に位置していれば良い姿勢だと言えるのです。肩は緩やかに後ろに下がっている必要があります。これは脊椎の矯正にも役に立ちます。姿勢が正しければ、自然な輪郭を保つことができるのです。
姿勢は本能的なもののため、考える必要はありません。姿勢筋と呼ばれる特定の筋肉群が、身体が優れた位置を維持するようサポートし、重力があなたの身体に悪影響をおよぼすことから守っています。またこの筋肉群は、歩いたり動いたりする際のバランス維持にも役立ちます。優れた姿勢を維持することで、日常的な活動時に必要な筋肉群を伸ばしすぎないでいられるのです。
職場で良い姿勢でいることで、オフィス全体の人間工学強化に大いに貢献することができます。職場での悪い姿勢は「テック・ネック」としても広く知られています。モニターをじっと見つめたり、タブレット端末に目を落としたりする間、多くの人が首を曲げた状態で頭を下げ、肩を前に出し背中を丸めた猫背の姿勢を取っています。猫背は姿勢が悪いということだけでなく、健康上の問題も引き起こします。様々な物理的要因によって姿勢が悪くなる可能性があります。
筋肉が硬すぎたり可動域がせまかったりすると、身体の各部位を効果的に整えることが困難になります。あなたの姿勢や身のこなしは、脚や体幹筋肉の強さに大きく影響されているのです。「ニュートラル・スパイン」とは良い姿勢を意味する用語です。私たちが正しい姿勢でいる時には、脊椎の周りの筋肉が協調し身体を適切に支えることができます。
職場で良い姿勢でいることの利点とは
正しい姿勢とは何かという定義を理解した上で、最も重要な利点について考えてみましょう。良い姿勢とは自分をどのように見せるかというだけではありません。姿勢が悪いと身体的および感情的健康が損なわれる可能性があるのです。
腰痛の軽減
座り姿勢にせよ立ち姿勢にせよ、うつむいた状態で長時間過ごしていると腰に負担がかかります。脊椎後部に大きな圧力がかかるのです。オフィスワーカーに良く見られがちなのが、長時間座りっぱなしもしくは立ちっぱなしでいることです。良い姿勢を保つことで、腰痛を防ぐことができます。
気分とエネルギーが向上する
適切な姿勢を取ることによって得られる最も重要な利点のひとつが、あなた自身の感情です。姿勢を正すことで1日を通してやる気と集中力を維持することができるようになります。
また、気持ちを高めてくれる効果もあります。研究によると、姿勢を改善することで自信が持てるようになるといいます。自分を上手に扱って自分自身を前向きにとらえることができれば、抑うつ感を感じることも少なくなるでしょう。それによって自尊心が高まり、自信と自分への誇りを持てるようになります。
頭痛の軽減
緊張性頭痛は、悪い姿勢を取ると項の筋肉の緊張が高まり悪化する可能性があります。姿勢を正すと筋肉の緊張がゆるみ、多くの場合頭痛が軽減されます。姿勢を正しく保つためには、意識をもって行う必要があります。私たちはパソコンに向かっている時も、おいしい夕食を食べている時も、目の前のことに夢中になってしまう傾向があります。その結果として姿勢が悪くなってしまうのです。
コンピューターのモニターにメモをはって、最適な姿勢を保つように自分をうながすと良いでしょう。
呼吸がしやすくなる
背筋を伸ばして、肩の位置を後ろに下げて立ったり座ったりすると呼吸がしやすくなります。この姿勢によって胸が開き、より深い呼吸ができるようになるのです。
骨と筋肉の健康状態が改善する
骨と筋肉によって、私たちの身体の姿勢が決まります。脊椎の位置が正しければ、関節や骨への負担が最小限に抑えられます。その結果として、全身痛が軽減される、または変形型関節症などを発症するリスクが低くなるのです。体幹の筋肉を強化するためのエクササイズは数多くありますが、医師によると、適切な姿勢を取ることが体幹の筋肉群を整えるためには最も効果的な方法だといいます。
血行と消化を促進する
基幹的な臓器を圧迫すると、血液循環が悪くなり、こうした臓器の機能が低下します。血液循環を健全に保つためには、足を組むなどの血流を圧迫する姿勢を避け、正しい姿勢を取ることが大切です。
姿勢が悪いと、消化管を含む胴体の中のすべての臓器が圧迫されます。蠕動運動によって、分解された食物が腸に運ばれます。この動きは横隔膜によって引き起こされます。呼吸をすると横隔膜が腹壁に降りて来て、それに腰や背中、腹筋などが反応して動くことで起きるのです。この仕組みは蠕動運動を助けますが、身体が圧迫された状態ではなく、自由に伸ばして動かせる状態でこそ機能するのです。
脊椎と首の健康状態を改善する
適切な姿勢を取ることで、首や背中に問題が起きるリスクが軽減されます。仕事中に背中を丸めたりかがんだりすると脊椎の発達に悪影響がおよぶ可能性があるのです。働く人々が病欠をする時、その理由の中で最もありうるものが腰痛です。仕事で長時間立ちっぱなしでいなければならない人は、姿勢を適切にすることで、疲労感や脚の痛み、痙攣を減らすことができるかもしれません。
姿勢を改善するためのヒントとは
人間工学に基づいた机
姿勢を良くするためには、人間工学に基づいた仕事用スペースを設定する必要があります。このスペースは、調節可能なコンピュータースクリーンや高さ調節可能な机、人間工学に基づいた椅子、および最適な位置に置かれたマウスとキーボードで構成されます。健康的な姿勢を保つための調節可能な机として、シッティングデスクに代えてスタンディングデスクを導入することをお勧めします。座りながら机の高さを調節することができます。それにより、下を向くのではなく頭をまっすぐに保つことができるのです。立つことで姿勢も改善されます。シットスタンドデスクを使えば、作業中にうつむくことも少なくなります。
同じ姿勢のまま長時間過ごすことで、身体に悪影響がおよぼされます。座る際には、適切な種類のオフィス用椅子に座るようにしてください。適切に調節することができる人間工学に基づいて設計されたオフィスチェアには、十分に機能するランバーサポートを備えられています。あなたの健康のための投資として最適なものです。
ラップトップパソコンを高い位置に上げる
まだ自宅に人間工学に基づいた机を設置してなくて、それでもラップトップパソコンを使って仕事をする必要がある場合でも、姿勢を正しく保つための方法がいろいろとあります。ラップトップパソコンを目の高さまで上げるには、厚手の本を重ねる、収納ボックスを利用するなどの方法があります。または、自宅にあるラップトップパソコンスタンドやラップトップライザーなどを利用するのも良いでしょう。ラップトップパソコン用の付属キーボードとマウスがあれば、ディスプレイを目の高さに持ち上げたまま作業ができます。人間工学に基づいた椅子を使わなくても、上半身をかがめて座ることなく、肩を後ろに引いて背すじを伸ばして座ることができるでしょう。
体幹エクササイズ
ジムに通ったり、自宅で体幹の強化運動をしたりなどの習慣をつけましょう。腹筋とプランクはどちらも、定期的に行うと効果的です。どちらも自宅で行うことができます。プランクは体幹を鍛えるだけでなく、身体を安定させるためのトレーニングとしても効果があります。また、スクワットは自宅でもジムでも行うことができる優れたエクササイズで、体幹筋肉と背中の筋肉を鍛えるためには最適です。
姿勢はあなたの生活の様々な要素に影響を与えます。生産性の高い生活を送るためには、1日を通して適切な姿勢を保つことが非常に重要です。
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