これまで長い間、一般的な仕事に従事する人々は日常業務をデスクに向かって、オフィスで、または椅子に座って行ってきました。コンピューターでの仕事、物づくり、そして製図など、すべての仕事がデスクで行われています。このことが私たちの仕事に対する見解を大きく変化させると同時に、私たちの身体の機能にも様々な変化をもたらしました。
私たちの身体は本来、長い間座ってコンピューターに向かうようには作られていません。立ち上がった姿勢で、肉体労働や狩りをしたり、作物を収穫したり子どもを育てたりするように作られているのです。座ったままでいることで、心血管疾患のような身体器官の不全などの様々な合併症を引き起こし、明らかな人間工学的配慮に欠けた状況につながる可能性があるのです。
ここからは、一日中コンピューターに向かって座っていることで起こる可能性が最も高い負傷についていくつかお話しします。そして負傷を避ける、または予防する方法についてもご紹介します。
手根幹症候群
手根幹症候群とは、手と手首にくり返しストレスを与えることで起こる症状です。最も一般的な原因は、マウスをクリックする、キーボードを打つなど、手首を不適切な角度に曲げた状態でくり返し動かすことです。現在の社会で一番よく見られる不快な労働災害のひとつです。
アメリカでは毎年最大2,800万人の人々が手首の負傷で苦しんでいます。補償請求により企業は数千ドルの費用が必要となる場合もあります。治癒には数週間から数か月かかる可能性があり、さらに再発、悪化することもありうるのです。
予防するためには姿勢を調整することです。人間工学に基づいた最適な姿勢を取るために、キーボードとひじをほぼ同じ高さにしましょう。キーボードをたたくにはひじを90度の角度でまげて、両腕を両脇から中央辺りに置く必要があります。けがを避けるためにはさらに、手や腕のエクササイズを試してみてはいかがでしょうか。
人間工学に基づいたタイピングをするために、様々なツールを利用することができます。こんなものはどうでしょうか:
人間工学に基づいたキーボードを使えば、手首をより自然な位置に置いて入力することができます。
リスト・レストを手のひらの下に置けば完璧です。ただし手首の下には置かないようにしましょう。手首の腱に大きな圧力がかかって、けがを悪化させる可能性があります。
手首固定器具や他のタイプのマウスなどのツールも役に立つでしょう。
目の疲れ
眼精疲労は、身体的な疲労ではないものの、他の問題を多く引き起こしかねません。目の疲れによって頭痛が起こることもあり、頭痛を解消しようとすることが他の身体の姿勢の問題につながってしまうこともあります。目の疲れや倦怠感を長い間そのままにしておくと、視力の低下やドライアイの原因となることもあるのです。
予防する方法をご紹介します。目の疲れを軽減するには作業環境を変えることです。そのためにはいろいろな方法があります。コンピューターがまぶしい場合は、オフィスのその他の光源を調整することで光を軽減することができます。反射防止用コーティングや防眩シールド付きの新しいモニターを購入できれば望ましいでしょう。または目の疲れを軽減するために偏光レンズや防眩レンズのめがねを使用しましょう。
こうした適切な対応策が大切であることは言うまでもないことです。コンピュータースクリーンに顔を近づけすぎないようにしましょう。適切な距離は、スクリーンのサイズと表示される文字の大きさによって決まります。モニターアームはスクリーンの高さを適切に調整できるため、首や目の疲れを軽減するのに役に立ちます。
背部損傷および腰痛
オフィスで働く人や、1日のほとんどを座った姿勢で過ごす人にとって、腰痛はとりわけよく起こりうる労働災害です。背部損傷は程度の軽いものであっても身体を消耗させるため、長期的な損傷が起こる、姿勢が悪くなる、既存の健康問題が悪化するなどに加えて、労働者による補償請求にいたる場合もあるのです。軽い腰の不快感は筋肉疲労によるものが多いですが、そのまま放置しておくと他の様々な病気を引き起こしかねません。
予防する方法をご紹介します。身体が快適な姿勢で座ってください。腰の不快感の要因となるのは腰椎です。直立した姿勢で座ることが大切です。腰椎を良い姿勢に支えるために、腰枕や人間工学に基づいて作られたオフィスチェアーなどが役に立ちます。脊椎が自然な湾曲を描けるようにしましょう。
一日を通して、時に立ち上がってストレッチをすることも良いでしょう。ストレッチは筋肉の緊張を和らげ、腰痛を防ぐのに役に立ちます。スタンディングデスクを使用することで座っている状態から立っている状態へ姿勢を変えることも有益です。
回旋腱板の損傷
肩の回旋腱板は、オフィスや通常の身体を動かす活動の中で損傷しやすい部位です。また、損傷を完治させ腕の機能を回復するためには外科手術や広範に渡る理学療法をくり返し行う必要があり、治療費がかかる損傷のひとつです。不適切な姿勢や、腕をあげたままで作業している場合、回旋腱板や他の肩の部位にいつ問題が起きても不思議ではありません
予防する方法をご紹介します。腕にかかる力を念頭に置きながら作業してください。肩に負担をかけることで腕の損傷が起こりやすくなります。よく使う道具などは頭上に置かないようにしましょう。頭上に置ける物の重量を制限することです。背筋を伸ばし、腕を身体の両脇に置いて、ひじ掛けの位置を適切にするなど、人間工学に基づいた理想的な姿勢で作業することが役に立ちます。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、脊髄を損傷することで起こる背部損傷のひとつです。伸縮性の椎間板は脊柱を構成している関椎骨の間にあって、身体を動かす際に脊柱の緩衝材や潤滑油の役割を果たします。身体が緊張し酷使された時、脊柱の中央の柔らかい部位が椎間板の間に押し出される場合があります。
これにより近くにある神経や筋肉が刺激を受け、凝りや痛みが引き起こされ、神経が損傷される場合があるのです。これは脊椎に沿ったどの部位でも起こる可能性があります。椎間板ヘルニアは、まったく症状が感じられない場合と、激しい痛みで身体を動かすことに問題を引き起こす場合とがあります。
予防するには、身体の姿勢を適切に保つことです。仕事で大きな物を持ち上げる必要がある時は、背中ではなくひざを使って持ち上げましょう。座ったり立ち上がったりする時は、背筋を正しい位置でまっすぐ伸ばすように姿勢を調整します。ショルダーハーネスを利用することで肩の位置を後ろに引き、姿勢を正しい位置に戻すことができます。
靴や体重、あなたの活動量などについても考慮する必要があります。背部損傷は長時間座った姿勢でいる人によく見られる症状です。立ち上がること、ストレッチをすること、そして作業する際にもたれかかった姿勢を取ることも予防に役に立ちます。ハイヒールの靴は避けるようにしましょう。フラットシューズは背骨に対する圧迫を軽減してくれます。
首の損傷
現代の職場では首の損傷はあまりにも多く見られる症状ですが、多くの人が自分の姿勢がその要因になっていることに気づいていません。私たちが通常使用している機材の多くが人間工学に基づいて作られていても、姿勢をいかに取るかには直接結びつかないため、何かがうまく行かないという時にもその問題は見過ごされてしまいがちです。
首の損傷は予防が簡単な症状であると同時に、発症した場合に治療するのに最も費用がかかるもののひとつでもあります。治癒までに長い時間がかかり、症状が重い時には手術が必要な場合もあるのです。軽度なものでも自然に治るまでに数週間から数か月かかる場合があります。また再度痛みが戻ってくることも頻繁にあり、治癒に向かっていたはずが逆戻りして悪化することもよくあるのです。おそらく最も予防するべき労働災害のひとつです。
仕事で使う機材の高さを調整して、視角を自然で片寄らない位置に置くようにしましょう。一般的なオフィスで働く人はつまり、モニターのスクリーンの高さを調整するということです。まっすぐ前を見る、もしくは視線を少し下に落とすという時は、目の高さにスクリーンの上部3分の1の位置が来るはずです。これは座っている、立っているに関係なく当てはまります。
デスクトップパソコンで作業する場合は、取り付け型のモニターアームを使って、スクリーンの高さを調整しましょう。ラップトップパソコンで作業する場合は、スクリーン取り付け型ドックや、USBキーボードやマウスを装備したラップトップスタンドを使用しましょう。通常のラップトップキーボードは人間工学に基づいて作られていないため、こうしたUSBキーボードは手首の損傷を予防するのにも役に立ちます。
FlexiSpotのチェアGC02はヘッドレストを装備しており、こうした質の高い人間工学に基づいて作られた椅子を使用することで首の痛みを軽減することができます。また、首と肩を60分から90分に1度など一定の時間ごとに伸ばす習慣をつけると良いでしょう。
要点
とても簡単なことを実践するだけで、頻繁に起こりがちな仕事中の負傷を予防することができるのです。新しいハードウェアや事務用品、高性能の機器や備品を必要とする人もいるでしょう。しかし職場を適切な配置にすることが、健康的に長く仕事をするために大切なことなのです。違和感を覚えた場合には、休憩を取る、ストレッチやエクササイズなどをする、座りっぱなしではなく時には立って作業をするなど、姿勢を出来る限り適切に保つように意識するようにしましょう。