近年、テレワークの普及や健康意識の高まりを背景に、電動昇降デスクへの注目が高まっています。昇降デスクを選ぶ際、「天板サイズ」や「昇降範囲」、「搭載機能」などに目が向きがちですが、実は製品の安定性や耐久性を大きく左右する重要な要素があります。
それが、デスク全体を支える「脚フレーム」です。
昇降デスクの揺れにくさや耐荷重性能、長期間の使用に耐えられるかどうかは、フレームに使用される素材によって大きく変わります。なかでも、多くの高品質な昇降デスクに採用されているのが「SPCC(冷間圧延鋼板)」です。
本記事では、SPCC鋼材の基本的な特徴やメリット、なぜ昇降デスクのフレーム素材として広く採用されているのかについて詳しく解説します。
SPCC鋼材とは?基本知識と主な特徴
まずは、SPCC鋼材とはどのような素材なのかを見ていきましょう。
SPCCとは、「Steel Plate Cold Commercial」の略称で、JIS(日本産業規格)で定められた冷間圧延鋼板の一種です。
一般的には「コールド材」や「ミガキ材」と呼ばれることもあり、家電製品、自動車のボディ、オフィス家具など、さまざまな製品に使用されています。
SPCCが幅広い分野で採用されている理由は、冷間圧延によって生み出される優れた性能にあります。ここでは代表的な4つの特徴をご紹介します。
--altImgStart--{"link":"https://s3.springbeetle.top/prod-common-bucket/commodity/item/1028_file_spcc-standing-desk-frame-picture-3_20260623_8KU2g0w2.jpg","alt":"FlexiSpotの電動昇降デスクフレームE7 Proを上から撮影した様子"}--altImgEnd--
① 表面が滑らかで美しい
SPCCは、常温で鋼材をローラー圧延する「冷間圧延」という製法で作られています。
高温で加工する熱間圧延材とは異なり、表面に酸化皮膜(スケール)が発生しにくいため、滑らかで均一な仕上がりになるのが特徴です。
そのため塗装後の見た目も美しく、オフィス家具やインテリア製品など、デザイン性が求められる製品にも適しています。
② 寸法精度が高い
冷間圧延では加熱による金属の膨張や収縮の影響を受けにくいため、厚みや幅のばらつきを抑えられます。
その結果、設計通りの寸法で加工しやすくなり、高い精度が求められる機械部品や家具の可動部にも広く利用されています。
昇降デスクにおいても、フレームや支柱の精度が高いほど、昇降時のスムーズな動作や安定性の向上につながります。
③ 加工しやすく複雑な形状にも対応できる
SPCCは炭素含有量が比較的少なく、加工性に優れた鋼材です。
曲げ加工やプレス加工、打ち抜き加工などを行いやすいため、複雑な構造やデザインにも対応できます。
昇降デスクのフレームや補強パーツなど、多様な部品を高精度で製造できる点も大きなメリットです。
④ 塗装や表面処理との相性が良い
SPCCは表面が均一で滑らかなため、粉体塗装(パウダーコーティング)やメッキ処理との相性に優れています。
塗料が密着しやすく、塗膜の剥がれや劣化を抑えられるため、防錆性や耐久性の向上にも貢献します。
長期間使用する昇降デスクでは、こうした表面処理の品質も製品寿命に大きく関わるポイントのひとつです。
「SPCC」と「SPHC」の違い|なぜ昇降デスクにSPCCが採用されるのか
鉄鋼材料について調べていると、「SPHC(熱間圧延鋼板)」という名称を目にすることがあります。
SPCCとSPHCはいずれも一般的な鋼板ですが、製造方法や特性には大きな違いがあります。その違いが、昇降デスクの性能にも大きく関わっています。
SPHC(熱間圧延鋼板)は比較的コストを抑えやすく、建材や構造部材など幅広い用途で使用されています。一方で、熱間加工による寸法誤差が生じやすく、表面の仕上がりもSPCCほど滑らかではありません。
対してSPCCは、寸法精度や表面品質に優れており、高い精度が求められる製品に適しています。
電動昇降デスクの脚部には、複数の支柱が重なりながら伸縮する「テレスコピック構造(伸縮構造)」が採用されています。
この構造では、各パーツがわずかな隙間でスムーズにスライドする必要があるため、フレーム部材の寸法精度が非常に重要です。
もし精度にばらつきが大きい素材を使用すると、昇降時の動作が不安定になったり、摩擦による異音やガタつきが発生したりする可能性があります。
そのため、多くの高品質な昇降デスクでは、寸法精度と剛性のバランスに優れたSPCC鋼材がフレーム素材として採用されています。
SPCC製フレームを採用した昇降デスクのメリット
SPCC鋼材は、昇降デスクの安定性や耐久性を支える重要な素材です。ここでは、ユーザーが実際に使用するうえで感じやすいメリットを3つご紹介します。
--altImgStart--{"link":"https://s3.springbeetle.top/prod-common-bucket/commodity/item/1028_file_spcc-standing-desk-frame-picture-4_20260623_nP1Rawwj.jpg","alt":"FlexiSpotの電動昇降デスクフレームE7Hを写したクローズアップ"}--altImgEnd--
メリット① 高さを上げても安定しやすく、揺れを抑えやすい
昇降デスクでは、天板を高く設定するほど揺れが発生しやすくなります。
SPCCは冷間圧延によって高い寸法精度を実現しており、適切な設計のフレームと組み合わせることで、優れた安定性を発揮します。
そのため、立ち作業時やモニターアームを使用する環境でも、タイピングやマウス操作による細かな振動を抑えやすく、快適な作業環境を維持しやすくなります。
もちろん、実際の安定性はフレーム構造や支柱の段数、鋼材の厚みなどによっても左右されますが、SPCCは安定性を支える重要な要素のひとつといえるでしょう。
メリット② マルチモニター環境にも対応しやすい高い耐荷重性能
近年は、大型モニターやマルチモニター環境、モニターアームを活用するユーザーが増えています。
こうした環境では、デスクフレームにかかる負荷も大きくなります。
SPCC製のフレームは強度と剛性に優れているため、高い耐荷重性能を実現しやすく、多くの昇降デスクで80kg〜125kg以上の耐荷重が設定されています。
重量のある機材を設置する場合でも、安定したデスク環境を構築しやすい点は大きなメリットです。
メリット③ 長期間使いやすい耐久性と耐摩耗性
昇降デスクは、日常的に昇降動作を繰り返す家具です。
そのため、モーター性能だけでなく、フレームや支柱部分の耐久性も重要になります。
SPCCは高い寸法精度を持つため、支柱内部のガイドパーツや滑り材との接触が均一になりやすく、特定箇所への負荷集中を抑える効果が期待できます。
その結果、摩耗やガタつきの発生を抑えながら、長期間にわたってスムーズな昇降動作を維持しやすくなります。
昇降デスクを長く使いたい方にとって、フレーム素材としてのSPCCは見逃せないポイントといえるでしょう。
SPCC鋼材の注意点とメーカーが行う防錆対策
SPCC鋼材には多くのメリットがありますが、ひとつ注意したい点があります。
それは、適切な表面処理を施さない場合、サビが発生しやすいことです。
SPCCは冷間圧延によって製造されるため、表面に熱間圧延材のような厚い酸化皮膜がありません。そのため、水分や湿気、汗などに長期間さらされると、腐食が進行する可能性があります。
もっとも、現在の高品質な昇降デスクでは、この弱点を補うためにさまざまな防錆処理が施されています。
なかでも広く採用されているのが「粉体塗装(パウダーコーティング)」です。
粉体塗装とは、溶剤を使用しない粉末状の塗料を静電気によって付着させ、高温で焼き付ける塗装方法です。
粉体塗装には次のようなメリットがあります。
- 傷や衝撃に強い厚みのある塗膜を形成できる
- 水分や湿気から鋼材を保護し、防錆性能を高められる
- マットな質感や高級感のある表面仕上げを実現できる
- 溶剤をほとんど使用しないため環境負荷を抑えられる
昇降デスクを選ぶ際は、フレーム素材だけでなく、どのような表面処理が施されているかも確認しておきたいポイントです。
「SPCC鋼材+粉体塗装」と明記されている製品であれば、耐久性や防錆性の面で安心して選びやすいでしょう。
--altImgStart--{"link":"https://s3.springbeetle.top/prod-common-bucket/commodity/item/1028_file_spcc-standing-desk-frame-picture-2_20260623_VUiwDwhB.png","alt":"FlexiSpotの電動昇降デスクE7H Proを斜め前方から撮影した様子"}--altImgEnd--
失敗しない昇降デスク選び|SPCC採用モデルのチェックポイント
SPCC鋼材を採用していても、フレーム設計や構造によって使い勝手や安定性は大きく変わります。
ここでは、昇降デスクを比較する際にチェックしておきたいポイントを3つご紹介します。
チェック① フレーム重量とフレーム構造を確認する
一般的に、フレーム重量が重い製品ほど厚みのある鋼材が使用されている傾向があります。
そのため、フレーム重量は安定性を判断する際の参考指標のひとつになります。
ただし、安定性は重量だけで決まるわけではありません。
支柱の構造やフレーム設計、ビームの強度なども大きく影響するため、重量だけでなく製品仕様全体を確認することが重要です。
チェック② 2段式と3段式コラムの違いを確認する
昇降デスクの支柱には、大きく分けて「2段式」と「3段式」があります。
3段式コラムは可動範囲が広く、身長差のある家族で共有する場合や、座り作業と立ち作業を頻繁に切り替える場合に適しています。
また、製品によっては高い位置でも安定性を確保しやすい設計が採用されていることがあります。
現在の中〜上位モデルでは3段式コラムを採用するケースが増えており、昇降範囲や使い勝手を重視する方におすすめです。
チェック③ ビーム構造と周辺機器との相性を確認する
昇降デスクの安定性を支える重要なパーツのひとつが、左右の脚をつなぐビーム(梁)です。
ビームの形状や強度によって、デスク全体の剛性や使い勝手が変わります。
また、モニターアームやケーブルトレーを設置する予定がある場合は、クランプの取り付けスペースが十分確保されているかも確認しておきましょう。
近年は配線収納機能やケーブルマネジメント機能を備えたモデルも増えているため、デスク環境をすっきり整えたい方はあわせてチェックすることをおすすめします。
まとめ|SPCC鋼材は昇降デスクの品質を支える重要な要素
電動昇降デスクは長期間使用する家具だからこそ、天板デザインや機能だけでなく、フレームに採用されている素材にも注目したいところです。
SPCC(冷間圧延鋼板)は、高い寸法精度と優れた剛性を兼ね備えており、多くの高品質な昇降デスクで採用されています。
さらに、防錆性を高める粉体塗装などの表面処理が組み合わさることで、長期間にわたり安定した使用環境を支えます。
昇降デスクを比較・検討する際は、昇降範囲や耐荷重だけでなく、
- フレーム素材
- 支柱構造
- 表面処理
- フレーム設計
といったポイントも確認してみてください。
製品スペックの中にある「SPCC鋼材」という表記は、昇降デスクの安定性や耐久性を見極めるうえで参考になる指標のひとつです。
よくある質問(FAQ)
SPCC鋼材とはどのような素材ですか?
SPCC鋼材は、JIS(日本産業規格)で定められた冷間圧延鋼板の一種です。表面が滑らかで寸法精度が高く、加工性にも優れていることから、家電製品や自動車部品、オフィス家具など幅広い製品に採用されています。昇降デスクでは、フレームや支柱部分の素材として使用されることが多く、安定性や耐久性の向上に貢献しています。
昇降デスクにSPCC鋼材が使われる理由は何ですか?
昇降デスクの脚部には、複数の支柱が伸縮する精密な構造が採用されています。そのため、高い寸法精度と剛性を持つSPCC鋼材が適しています。SPCCを使用することで、昇降時のスムーズな動作やデスク全体の安定性を確保しやすくなります。
昇降デスクの安定性はSPCC鋼材だけで決まりますか?
いいえ。安定性はSPCC鋼材の有無だけでなく、フレーム設計、支柱の段数(2段式・3段式)、鋼材の厚み、ビーム構造など複数の要素によって決まります。SPCCは安定性を支える重要な要素のひとつですが、製品全体の設計もあわせて確認することが大切です。

